ISO22000・FSSC22000認証と品質管理職のキャリア、北海道での評価
- ISO22000は2005年発行の国際規格、FSSC22000はそこに追加要求を加えたGFSI承認スキームです。
- 2021年のHACCP義務化を経て、北海道の乳業・水産加工ではFSSC22000等の上位認証取得が広がっています。
- 僕の体感値では、FSSC22000取得企業の品質管理職求人は基本給が月2〜3万円ほど高い傾向があります。
「実は去年、うちの工場でFSSC22000を取得したんです。監査対応の窓口は私がやっていました」——面談の場で、ある候補者の方がそう教えてくださったことがありました。
結論から申し上げると、ISO22000やFSSC22000といった食品安全マネジメントシステムの認証は、北海道の食品メーカーの品質管理職の転職市場において、「認証名を履歴書に書けること」よりも「取得・維持のプロセスにどう関わったか」という運用経験の中身で評価が決まる、というのが僕の体感値です。内部監査員として何件の監査を回したか、外部審査で指摘された不適合をどう是正処置(CAPA)として文書化し、次の審査までに定着させたか。ここまで語れるかどうかで、書類選考の通過率も、面接での深掘りの質も、大きく変わってくると考えています。
0.(結論)認証は「持っているか」ではなく「運用してきたか」で評価が変わる
先にお伝えしておくと、ISO22000やFSSC22000は個人が取得する資格ではなく、企業・工場が取得する認証です。つまり品質管理担当者個人の履歴書に「ISO22000保有」と書くことはできません。書けるのは「ISO22000・FSSC22000の構築・維持・内部監査に携わった経験」です。この違いを理解せずに求人票を読んでしまうと、「認証取得企業=経験者優遇」という誤解をしたまま応募して、面接で実務の深掘りに答えられず苦戦するケースを、僕はこれまで何度か見てきました。逆に言えば、認証未取得の企業で品質管理をされてきた方でも、HACCPの実務経験を丁寧に語れれば、認証取得企業への転職は十分に射程に入ると考えています。
1. ISO22000とFSSC22000、何が違うのか
まず整理しておきたいのが、ISO22000・FSSC22000・JFS規格という3つの言葉の関係です。現場で「うちはISOを取っている」と言われても、実際にはFSSC22000だったりJFS-Cだったりするケースが多く、この違いを理解しているかどうかは、面接で実務を理解しているかを判断する一つの材料になっていると感じます。
| 規格 | 策定・運営主体 | 特徴 |
|---|---|---|
| ISO22000 | 国際標準化機構(ISO) | 食品安全マネジメントシステムの国際規格そのもの。2005年発行、2018年改訂。単体ではGFSI承認スキームではありません |
| FSSC22000 | Foundation for Food Safety Certification | ISO22000に前提条件プログラム(PRP)と追加要求事項を組み合わせたスキーム。GFSI(世界食品安全イニシアチブ)承認 |
| JFS規格(A/B/C) | 一般社団法人食品安全マネジメント協会(JFSM) | 日本発の規格。JFS-Cは国際監査を含みGFSI承認、JFS-A/Bは国内取引向けの簡易版 |
大手小売やハム・乳製品の輸出取引先からは、GFSI承認スキームであるFSSC22000やJFS-Cの取得を求められる場面が増えています。一方で国内の卸・給食向け取引が中心の中小事業者では、コストと工数のバランスからJFS-A/Bに留めているところも多いというのが、僕がこれまで拝見してきた求人票や企業サイトからの体感です。
2. なぜ北海道の食品メーカーが認証取得を急いでいるのか
2021年6月の食品衛生法改正でHACCPに沿った衛生管理が原則すべての食品等事業者に義務化されたことは、他の記事でも触れてきた通りです。ただ、HACCPはあくまで「衛生管理の考え方」であり、ISO22000やFSSC22000のような「マネジメントシステムとしての認証」とは階層が異なります。北海道の食品メーカーが後者の取得を急いでいる背景には、大きく2つの理由があると僕は見ています。
一つは輸出です。農林水産省が食品輸出の重点品目に位置づけているホタテやサケ・マス類、乳製品などは、輸出先の商流に乗るためにGFSI承認スキームの取得を実質的な取引条件とされる場面が増えています。オホーツクや根室のホタテ・カニ加工、十勝・根釧の乳業で、ここ数年FSSC22000やJFS-Cの取得が相次いでいるのは、この文脈で理解すると腑に落ちやすいと思います。もう一つは国内大手小売・大手食品メーカーとの取引要件です。プライベートブランド商品の製造委託を受ける事業者に対して、発注側がFSSC22000クラスの認証を求めるケースが、道内の中堅・大手メーカーを中心に広がってきています。北海道庁も道内食品関連事業者を対象にHACCPや上位認証の導入状況を継続的に調査・公表しており、道央の大手事業者ほど取得が先行し、地方の中小事業者では取り組みが途上にあるという傾向が、こうした公表資料からも読み取れます。
3. 認証取得企業で品質管理職に求められる仕事内容の変化
冒頭でご紹介した候補者の方の話に戻ります。その方は十勝の乳業メーカーで、FSSC22000の取得プロジェクトに品質管理担当として関わり、その後の維持・内部監査まで一貫して担当されていました。外部審査で最初に指摘を受けたのは、原料保管庫の温度記録に一部欠落があったという、地味だけれど見過ごせない不適合だったそうです。話を伺う中で印象的だったのは、「HACCPまでは製造ラインの中の話でしたが、FSSC22000になってからは購買・物流・人事の教育記録まで巻き込んで文書を作る必要が出てきて、社内調整の比重がぐっと増えました」という言葉でした。
実際、FSSC22000やISO22000の要求事項には、フードディフェンス(意図的な混入への対策)、フードフラウド(食品偽装への対策)、アレルゲン管理、サプライヤー評価といった、HACCPの枠を超えた項目が含まれます。品質管理職に求められる仕事も、製造ラインの記録確認やモニタリングに加えて、次のような業務にウエイトが移っていきます。
- 内部監査員として年間複数回の監査を計画・実施し、報告書をまとめる
- 外部審査で指摘された不適合に対して是正処置(CAPA)を立案し、再発防止まで追いかける
- 購買・物流・人事など他部門を巻き込んで、教育記録やサプライヤー管理記録を整備する
製造ラインの中だけで完結していた業務から、部門横断のマネジメント業務へと役割が広がる。これが認証取得企業で品質管理職に転職した後、多くの方が最初に戸惑うポイントだと感じています。
4. 転職市場でどう評価されるか、求人票の読み方
求人票の中に「ISO22000」「FSSC22000」という言葉が出てくる場合、大きく2つのパターンに分かれます。一つは「取得済みで、維持・運用できる人を募集している」パターン。もう一つは「これから取得を目指しており、立ち上げに関わってもらいたい」パターンです。同じ言葉でも求められる経験は大きく異なるため、求人票だけで判断せず、面接でどちらのフェーズなのかを確認することを僕はいつもお勧めしています。
資格の面では、日本規格協会などが主催する内部監査員養成講座の修了証を持っていると、書類選考での印象は良くなる傾向があります。ただし、これはあくまで「基礎知識がある」ことの証明であり、実務経験の代わりにはなりません。僕の体感値で言うと、同規模・同職種の求人票を比較したとき、FSSC22000取得済み企業の品質管理職求人は、認証を持たない同規模企業の求人と比べて、基本給レンジが月2〜3万円ほど高めに設定されているケースが目立ちます。これは認証維持に必要な業務量の多さと、対応できる人材の希少性が反映された結果だと僕は理解しています。ただし、これはあくまで僕が見てきた求人票からの体感値であり、公的な統計ではない点はご承知おきください。
5. 未取得企業から認証取得企業への転職、見極め方とケース比較
認証取得企業への転職を考えるとき、僕は候補者の方に「今の会社がどのフェーズにいるか」を確認するようお伝えしています。おおまかに整理すると、次の3パターンに分かれます。
| 企業のフェーズ | 求められる経験 | 転職後の学びやすさ |
|---|---|---|
| 認証取得済み・運用が安定 | 既存の仕組みを回せる実務力 | 仕組みを見て学べるが、ゼロから作る経験は積みにくい |
| 認証取得中・構築フェーズ | 文書化・部門調整をリードする力 | 負荷は高いが、構築経験そのものが市場価値になる |
| 認証未取得・HACCPのみ | 基礎的な衛生管理・記録の実務力 | 今後の認証取得に伴い、経験の幅を広げられる可能性がある |
僕自身は、キャリアの伸びしろという観点では「構築フェーズ」の企業への転職を積極的に検討する価値があると考えています。負荷は決して軽くありませんが、ゼロから文書体系を作り、内部監査の仕組みを立ち上げた経験は、次の転職でも一次情報として語れる強い武器になります。一方で、ご家庭の事情やご自身の体力・生活リズムを踏まえて、安定運用フェーズの企業を選ぶという判断も、もちろん十分に合理的だと思います。
(結論)認証名より「関わった工程」を語れる準備を
ISO22000やFSSC22000は、それ自体が個人のキャリアを保証してくれる資格ではありません。ですが、その構築・維持・内部監査にどう関わってきたかを具体的に語れることは、北海道の食品メーカーの品質管理職市場において、確かな武器になると僕は考えています。冒頭でご紹介した候補者の方も、「監査対応の窓口をやっていました」の一言から、面接で不適合対応の具体的な事例をいくつも語ってくださり、それが評価につながりました。まずはご自身がこれまで関わってきた認証や仕組みについて、どの工程を、どこまで自分の手で回してきたかを棚卸ししてみることから始めてみてください。皆さんいかがでしたでしょうか。北海道の食品産業を支える品質管理の現場で、皆さんのキャリアがより良い形で報われることを願って、では今日もがんばりましょう。
よくある質問
Q. ISO22000やFSSC22000は取得すれば個人の資格になりますか?
いいえ、これらは企業・工場が取得する認証であり、個人資格ではありません。転職市場で評価されるのは、認証の構築・維持・内部監査にどこまで実務として関わったかという経験の中身です。単に認証取得企業に勤めていたというだけでなく、担当した工程や役割を具体的に語れる準備をしておくことが評価につながります。
Q. ISO22000とFSSC22000、どちらを取得すればいいですか?
取引先の要件次第だと考えています。輸出や大手小売との取引でGFSI承認スキームを求められる場合はFSSC22000やJFS-Cが実質的な選択肢になり、国内向け中心であればISO22000単体やJFS-A/Bで対応している企業も多くあります。転職の際は、企業がどの規格をなぜ選んでいるかを確認すると、その企業の取引構造が見えてきます。
Q. 認証未取得の企業から認証取得企業への転職は可能ですか?
十分に可能だと考えています。HACCPに基づく記録管理や現場改善の実務経験があれば、認証取得中の企業で文書化や部門調整をリードする役割として評価されるケースがあります。特に構築フェーズの企業では、ゼロから仕組みを作った経験そのものが評価対象になりやすいというのが実務上の傾向です。
IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。